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モビリティ活用コラムVol.1メインイメージ

Vol.01
2025.09.01

人手不足に挑む ー 段階的モビリティ導入のすすめ
助人から省人化へ、現場に寄り添う現実的アプローチ

「このままだと、人手が足りなくなる」
「ベテラン頼りで、次の世代が育っていない」

こういった声は、日本各地の工場や保守・点検の現場では日々聞こえてくるのではないでしょうか。

日本では既に「2024問題」として問題視されたトラックドライバー不足に象徴されるように、さまざまな業界の現場で、必要な人手が確保できずに業務継続が危ぶまれる状況となっています。

また、少子高齢化による人手不足の波も日本のあらゆる現場を直撃しており、従来のやり方では作業の維持すら難しくなりつつあります。

そのなかで、「Society5.0(ソサエティ5.0)」にもあるように、AIやロボット、IoT、ビックデータを組み合わせたモビリティ活用がしきりに議論されており、導入することで作業の効率化・自動化や、労働負担の軽減といったメリットが期待されていますi

とはいえ、人が行っている現場業務を「いきなり自動化」することは、予算・安全・ノウハウなど多くのハードルがあり、進められないのが実情でしょう。

そのため、モビリティ導入を成功させるには「まずは人の現場業務のアシストである“助人”から始めて“省人”につなげる」形での、段階的な現場改善のアプローチが必要です。

当社ヤマハモーターエンジニアリングでは、これまでモビリティの「試作」の視点から、お客様と共に現場課題を解決してきました。本記事では、そんな当社の知見を交え、日本の現場が抱える課題から、モビリティ導入に必要なステップの踏み方を紹介します。

01人手不足の時代に「モビリティ活用」が現場にもたらす恩恵

日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口(15~64歳)は2060年には約5,078万人まで減少すると予測されています。この40年間で2,400万人超が減少する計算であり、現場の担い手が急激に減るのは避けられませんii

(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口(令和5年推計)結果の概要new window」)

有効求人倍率を見ると、2024年1月時点の統計で全国平均が約1.27倍に対し、「建設分野(建設躯体工事の職業)は7.47倍」、「機械整備・修理分野は3.06倍」と、求職者不足が非常に深刻な水準に達していますiii。特に、建設現場や保守・整備担当者などの現場作業においては、人材確保が難しく業務停滞のリスクが高まっていますiv

こうした課題を解決するための手法として、近年さまざまな企業で試行錯誤が繰り返されているのがモビリティの活用です。

モビリティと聞くと、消費者向けの移動手段の印象を与えがちですが、モビリティの効力は現場作業においても発揮されます。

電動アシスト機能を持つカートや搬送機、追従走行機能を備えたロボット台車、自律走行型の構内車両など、現場の作業を支える幅広い可能性を持った技術群が挙げられます。

これらを導入することで、現場では多くの作業負荷の軽減を実現できます。例えば、これまで重量物の運搬を手作業で行っていた現場では、電動アシスト付きの台車を使えば身体的な負担を大きく減らすことが可能です。

作業の属人化が減り、「誰でも扱える」機器になることで、作業分担の幅が広がり、チームとしての柔軟性も高まるでしょう。さらに、自律走行技術を組み合わせれば、搬送業務などの一部は完全に人の手から離れることすら可能になります。

このように、モビリティの導入によって、「人手が足りなくても、現場の仕事が回る環境」を実現できるのです。

一例を挙げると、静岡県富士市消防本部大淵分署様では、県内初となる電動アシスト式ホースカーとして当社ソリューション「X-QUICKER」を導入いただきました。

山間部が多い管轄区域で、従来は2人がかりでホースカーを持ち上げていた段差越えも、X-QUICKERの大径タイヤと自然なアシスト制御により1人で軽々と行えるようになりました。その結果、消火活動に集中できる体制が整い、作業負荷の大幅軽減と隊員が安心して作業できる環境を実現しました。

同事例について詳しくは以下のページでご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

導入事例:直感操作と高い走破性で迅速にホースをさばき消火に専心new window

02モビリティ活用はなぜ進まないのか? 現場視点でみられる課題感

ここまでの解説で、モビリティには多くの可能性があることを述べてきました。一方で、なかなか導入に踏み切れない企業も多いのも事実です。

「そもそもとしてモビリティで何ができるのかわからない」など、活用に関する知見がないため、アイデアがなかなか出てこないことも要因としては大きいとも考えられます。

一方で、モビリティ導入の効果やメリットが見えていても、実際に踏み切れない企業も多いのが実情として存在するのではないでしょうか。

まず挙げられるのが「技術的な側面でのハードル」です。

検査や保守などの現場作業では、熟練者の勘や、その場の判断で対応するケースが多くあります。

「荷物の形状が不規則である」「通路が狭い」「作業順が流動的である」など、現場は常に変化しています。人間であれば容易にできる「その場の判断」や「柔軟な動き」が、技術的には再現が困難であることも珍しくありません。

「どこまでモビリティで代替すべきか」が定まっていないなかで闇雲に技術開発に投資することも難しいため、自社にノウハウがない状況では、技術開発の段階で大きな課題を抱えることになるのです。

加えて第二の要因として「信頼性や運用の面での不安」が挙げられます。
セキュリティや組込みソフトウェア分野で世界的に評価される技術企業BlackBerry Limitedの事業部門QNXの調査によると、日本企業の管理者のうち「ロボットやモビリティを完全に信頼している」と答えた割合はわずか10%に留まっており、導入後のリスクを不安視する声は根強い状況ですv

経済産業省の資料『自律移動ロボットアーキテクチャ設計報告書』でも、ロボット活用におけるイノベーションでは各ステークホルダーの不安を解消することが重要だと述べられており、ロボット活用における大きな課題のひとつと捉えられていますVI
“自律移動ロボットによる価値とリスクを共有するとともに、ステークホルダーの懸念の解消を促進する仕組みについて、検討・技術開発・ガイドライン作成が必要である”

レストランやホテルなど一部のサービス業で、配膳や清掃のような役割がロボット活用により自動化されつつある一方で、特に土木・建設や設備点検など重量物の取り扱いや特殊環境下での現場作業においては、「事故による労災のリスク」「現場の施設や物品を傷つけてしまう損耗リスク」など、多くの懸念事項があることも要因です。

「モビリティが暴走したらどうするのか」「現場でトラブルが起きたときに対応できる人がいるのか」「作業者が操作に慣れるのにどれくらい時間がかかるのか」といった心理的ハードルは、現場の主体が「人」である以上は避けようのないものでしょう。

特に日本では、高い品質の製品・サービスを作りながら、現場では安全第一が徹底されていることも要因になるため、「完璧さ」が求められます。

万が一の問題が起きた際の責任所在のあり方なども含めると、考慮すべき要素は枚挙に暇がありません。

このように技術導入による労働環境の改善というメリットは理解されていても、現場での信頼関係や安心感をどう醸成するかが、企業にとって大きな課題となっています。

03モビリティ導入は「助人」からはじめる段階的導入が現実解

こうした課題や不安を抱える現場にとって、最も有効なのは「いきなり省人化や自動化を目指さない」ということです。当社では「最初からすべての作業の省人化を目指す」のではなく、モビリティを段階的に導入していくのが有効と考えています。

段階的なモビリティ導入のイメージ

つまり、人をモビリティで代替することをいきなり目指すのではなく、「人を助けるところから始める」ことが、現場にとって負担が少なく納得感のある導入方法となります。

これが、「助人」という考え方です。

助人とは、現場で働く人の動作や負担をモビリティによって補助し、「作業を楽にすること、あるいは安心して行えるようにすること」を指します。つまり、運転は人のままで、モビリティはその支援役という立ち位置です。

具体例を挙げると、重量物を押す作業に電動アシスト台車を使えば、高齢の作業者でも楽に対応できるようになります。

その結果、2人1組で行っていた作業を1人でこなせるようになれば、作業工数の削減に繋がります。

最終的に助人は「省人」、つまりモビリティにおける走行の主体がシステムに置き換えていくことが目標です。自律走行や無人搬送などを踏まえた完全自動化がイメージしやすいでしょう。

モビリティ導入にあたっては自動化率を上げるほど技術的難易度があがり、付随して現場の不安感も増すことになります。

そこで、一足飛びに省人を目指すのではなく、助人という中間のステップを設けることで、ハードルを下げていくことが有効といえるのです。

なお、このアプローチを成功させるには、モビリティの「試作」が必要です。設計上は理想的でも現場に合うかどうかは、実際に動かしてみないと分からないからです。

試作を通じて現場でモビリティを実際に動かすことで、機能検証だけでなく、操作性・動作のスムーズさといった要素をリアルに確認することもできます。現場からのフィードバックをもとにチューニングや設計変更を行うことで、現場にぴったり合った仕様にブラッシュアップ可能です。

04MOBILITY KŌBŌは「構想から試作まで」を一気通貫で支援いたします!

このような「試作を用いたモビリティの段階的導入」を支援しているのが、当社ヤマハモーターエンジニアリングが展開する「MOBILITY KŌBŌ」です。

MOBILITY KŌBŌでは、構想段階の相談から、試作品の設計、制御開発、現場でのPoC(実証実験)、その後のチューニングまで、すべて一貫して対応できます。

試作開発の流れ

「やりたいアイデアはあるけど、どう形にすればいいか分からない」
「まずは小さく試して、感触を掴みたい」
「信頼性を確認したいから、現場で実証してから広げたい」

このような声に応える「現場とともに考えるパートナー」として、MOBILITY KŌBŌは多くの企業の段階的導入を支援しています。

現場負荷を軽減する電動アシストでの助人から始まり、自律走行による省人化までのステップにおいて、当社がこれまで陸・海・空の多様なモビリティ分野で培ってきた技術・ノウハウで支援をしています。

現場ごとでも課題は異なるため、最適なソリューションが提案可能です。
詳しくは以下のサービス概要資料をご利用下さい。

05まずは「スモールスタート」を切ることがモビリティ導入成功の秘訣

人手不足による生産性低下やリスク管理の難しさが今後さらに深刻化することを踏まえると、現場における省人化の取り組みは「待ったなし」の状況にあるといえます。

さまざまな現場において「限られた人員で作業を回す」体制の構築が急務であり、現場改善に向けた具体策が求められているのです。

だからこそ、現場の信頼を積み重ねながら社内イニシアチブを握りつつ、取り組みを段階的に進めるためにも、まずは「スモールスタート」を切ることを目指しましょう。小さな「実験→改善」のサイクルを繰り返すことが、長期目線での省人化実現では求められます。

「この作業、モビリティでなんとかできませんか?」

そのようなお客様の一言から、現場改善の第一歩は始まります。

ヤマハモーターエンジニアリングのMOBILITY KŌBŌは、その一歩を「試作」という形で支援できますので、お気軽にご相談ください。

出典

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